人を幸せにするジュエリー

お金は重要ではない。お金は使えばそれで終わりだ、だが美しいものは必ず残る。
これはサントドミンゴ族カルヴィン・ロヴァトの言葉です。
今回は彼の作品についてのお話です。サントドミンゴ族は、ヒシネックレスで有名な部族です。石や貝などの素材をカットし、ビーズにしたものを繋げて作ったネックレスをヒシネックレスと言います。私は写真の様にペンダントを通して使う事もありますし、シンプルにチョーカーとして身につけたりもします。

こちらはメロンシェル。彼の作品でよく使われる素材の一つです。
カルヴィンは全てのビーズを一から自分で制作するところから始めます。素材も多種多様、ターコイスはもちろんのこと、ジェットやサンゴ、サーペンタインなどの天然石や様々な種類の貝を使用します。

これら全ての素材を薄い四角形に、慎重にカットします。まずここで驚くべきことは、彼の作品に使われるビーズは、全て平行にカットされているという事です。平行にカットされたビーズは、実際ネックレスにして身に付けた時、非常に滑らかなカーブを描きます。これはとても重要なことであり、同時に他の作家との大きな違いです。並行でないビーズを、カルヴィンがジュエリーに使うことは決してありません。

その後四角い状態のビーズに穴をあけ、ワイヤーに通します。丸く滑らかなビーズになるまで、カルヴィンが納得いく最高の状態になるまで、何度も何度もグラインドをします。天然の素材を使用するカルヴィン、作業の途中でビーズに亀裂が入ったり、掛けてしまう事も良くあるそうです。
サントドミンゴのヒシネックレスをみると、そんな作業途中のハプニングの軌跡が見てとれます。注意深く観察すると、ネックレスのなかに、少し欠けているビーズをちらほらと見つけることがあります。
ですが、ここでもカルヴィンは絶対に妥協しません。少しでもビーズに傷がつくと、手前までのビーズを全てワイヤーから外し、傷ついたものだけをを取り除きます。ビーズに傷がつくたびに、これを何度でも繰り返し、完璧な状態のものだけが彼のネックレスに使われるのです。この徹底した制作へのこだわりは、尊敬に値します。

使われる天然石や貝の色の選択も抜きん出ています。兎に角実物をご覧ください。
彼が自然の中で発見した配色、サントドミンゴの四季のなかで感じてきた色の移り変わり。目に映る全てのものから色彩のヒントを得ている、というカルヴィン。今年のインディアンマーケットではなんと琥珀を使い、他の誰も真似する事の出来ない素晴らしい作品を出展しました。琥珀が光に当たるたび現れては消える色彩。琥珀の、動きのあるその色の美しさは圧巻です。マライカのオンラインショップでも、彼の琥珀を使ったヒシネックレスをご用意させて頂いております。

カルヴィンは決して急ぎません。これが特別なものなのだということは見てもらえば必ず理解してもらえる、そう信じているからです。決して焦らず、贅沢過ぎるほどの手間と時間をかけて作品を作り上げます。
日本であなたの作品を身につけることになる人たちにメッセージを届けたい、とリクエストしたら、こんな宝物の様な言葉を貰うことが出来ました。
『こういう人間がいたという事を覚えておいて欲しい。
たとえ悲しいときでも、あなたの心が軽くなりますように。身につけるたびに嬉しさや喜びを思い出せますように。
その為に美しいものを生み出そうと努力した人間がいた事を。あなたの幸せを願った人間がいたという事を。』

カルヴィン・ロヴァト 彼の工房にて