伝統に縛られない伝統 後編


ひさびさにアリゾナの大自然。
こちらはプエブロ族(HopiやZuniなどの定住インディアン)の前身、いにしえのアナサジ族の聖地でございますよー
なんか右端、すご岩です!!
さて、前回中途半端に終わってしまいましたが、続き。
伝統を守りつつ、伝統に縛られないアーティスト、Gerald Lomaventemaのお話でした。
今回彼の工房を訪ねたところ、「新しいブレスレットが出来てるんだ!!」とのことで、一番に見せてもらったのが、こちらのブレスレット。

彼自身の手でハンドカットされたターコイズのはまった、シンプルで優美なバングルです。
とても素敵だけど、なんだかGeraldっぽくないね、というのが私の返した素直な感想でした。
Geraldっぽくない、というか、Hopiっぽくない。
すると、彼は、
「そうなんだ、新しく教わった技術でさ、それに昔のインディアンが使っていた原始的な技術をあわせて作ってみたんだ」
と答えました。
原始的??そんな風には見えないけれど・・・??
と首をかしげると、
「こっちこっち、作り方を教えてあげるよ」
と、工房の奥へ。
「いい?今から説明するから、ぜひ日本のインディアンジュエリーファンに、どうやって作っているのか見せてね」とのこと。
おやおや、どうもうちのBlogを時々覗いてくれてるようです(笑)
まず、シルバーの板をバングルの形に曲げる所から。
注・この板はすでにカーブしてますが、ほんとはまっすぐな銀板をあてて、Cの字にする感じです。
次は、Cの字になった銀板を、この道具でこつこつたたきながら、反り返ったようなシェイプにしていきます。

こんな具合で、だんだん左の溝に移動して行けば、カーブがだんだんきつくなるわけです。
ちなみにこの道具、車の部品から手作りしたんだとか・・・。
鋼鉄だけど・・・
どうやって曲げたんだろ??
さて、そうして溝を付けたバングルを、真ん中から真っ二つに切ります。きゅいーん、と歯医者さんの音がしますね。
そろそろ勘のいい人は、どうやってあのバングルになるのかちょっとわかったかな?
さて、なんとなく形が見えてまいりました。

右側の原型が、
1・真ん中からカット
2・左右を入れ替える
3・中央部分に銀板を溶着
4・バングルの裏面になる銀板を溶着
5・石をはめ込む
6・磨き
・・・という手順を踏んで、あの最初のバングルになるわけです。

正直、型に流し込んで作る、キャスト方式にしたほうが、ぐっと簡単に量産できる形です。
ですが、そこをあえて、古いジュエリー作りにのっとって、手間のかかる方法を選ぶことで、ひとつのジュエリーに魂が宿るのです。
たんに「Hopiらしくない新しいスタイル」を追うのではなく、
「Hopiらしいジュエリー」「ナバホらしいジュエリー」が別れる前の、古いインディアンジュエリーの技法を使うことによって、
「Hopiらしさ」にとらわれない、よりピュアなジュエリーの美しさを表現したかったのじゃないかなぁ、
と、勝手ながら感じさせられたのでした。
ロロマに憧れ、ロロマスタイルのジュエリーを作るアーティストは多々いますが、
故・チャールズ・ロロマと、スタイルは違えど、
Hopiに育ち、
Hopiの伝統を愛し、
愛するからこそその殻を破って、
シンプルな「美しさ」を求めつつ、
伝統的な技法を守り続ける。
そんな姿勢を持つGeraldをみていると、ロロマの残したものは、Hopiの風に乗って、
目に見えないように息づいているのだなぁ、と感じます。
勉強熱心なGeraldは、今後もどんどんあたらしいジュエリーに挑戦していくことでしょう。
そんなGeraldの新作、なるべく早くHPにアップして、皆様の手元にお届けしたいと思います!!