デルバートゴードンのペンダント。

週末さらなる寒波が訪れ、今日車の温度計を見たら、なんとマイナス18度というありえない数字を表示していました。

犬の足もすっぽり埋まってます。朝外を見た瞬間、ここはアラスカ?と思う状況でしたよ。
4駆の車がない家は、こんなに雪が降ってしまうと家からでられなくなってしまいます。舗装された道路から外れた所に住む人々も多いので、一軒一軒の家に行く道を村の除雪車が除雪していました。
「馬小屋まで行く道も除雪してよ。」「OK」とかいう会話に、何だか笑顔になります。
でも今週の半ばにはまた寒波が…。
気を取り直して、合わせやすいペンダントのご紹介。
デザインとその存在感で人気のデルバートゴードン
もともと、インディアンジュエリーを作る工場の一員として働いていた彼。インディアンには珍しく、20年間も同じところに勤めていたそうです。
ここ最近、独立して最初から最後まで自分でジュエリーを作るようになりました。
いろいろなジュエリーを見て、そして自分のイマジネーションと組み合わせ、本当にいろいろなデザインを生み出します。
そして同じデザインでも、デルバートが作ると何だかすごく重量感があり、渋くなります。
アーティストの名前を知らない人にも、よく購入していただくデルバートの作品。
ホントに、渋い!の一言。

カルビンロバトのヒシと合わせてみました。
ペンダントの上の、ちょっとした細工がジュエリー作るのを楽しんでます!って感じが伝わってきてすごく嬉しいんですよね。花形のスタンプやナジャの形、サンゴを使ったり、渋さの中にかわいさもあるので、女性がしてもすごくしっくりきます。

ターコイズ×ナバホハンドメイドチェーンでシンプルペンダント。
チェーンはマライカの各お店で販売しています。
このチェーン、いぶしのきいたオールドスタイルのペンダントにすごく合って、よくセットでご購入いただいています。
長さも長めなので、男性の方でもOK。

いろいろなハイグレードストーンを使った作品もたくさん。
デルバートは、ホントに日本の職人さん!って感じの雰囲気を持っています。それを支える明るい奥さんと子供たち、何だか古き良き時代の家庭…って感じです。
そんなデルバートのペンダント、セーターの上にドン!としてもよし、中に忍ばせておくのもよし、ターコイズジュエリー初心者の方にも人気です。

いつでも元気、サンシャイン。

最近、サンシャインリーブスが、めきめきと腕をあげてきています。
新しいデザインにもどんどん挑戦し、すごく前向きで見ているこちらもうれしくなります。
サンシャインと言えば、やっぱりスタンプワーク。
中でも一番人気は合わせやすいバングル
幅が色々あるので、シンプルに細みのものをつけたらさりげなくオシャレ、ゴリッと極太をしたらオトコ!って感じでものすごくカッコいいです!!
一本づけしてもいいし、こんな風に重ねづけしても。

バングルはアーティストによって作る丸みが違うのですが、私はこのサンシャインのプレートのスタンプバングルが一番フィットします。
ぜひ店頭でお試しあれ。
石つきのバングルは、シンプルな軽めのシルバーバングルと合わせるとしっくりきます。

いつも大きい笑い声とジョークで場を和ませてくれるサンシャイン、
子供の時から「サンシャイン」と呼ばれているそうです。
あだ名がいつまでもそのままって、なんかインディアンらしいですよね。
ちょっと前に入荷したこちらのペンダント

リバーシブルでしかもハイグレードローンマウンテンやナンバーエイトを使用して
作ってもらいました。
彼の作品である、スタンプワークで作ったヨーヨーをヒントに出来上がった作品です。
裏は、スターだったり、スワスティカと呼ばれるナバホの幸運のモチーフだったり、一点一点違うからそこもなんとも愛らしい作品。

大きさはいろいろ。革ひもとあわせてシャツの上にすると映えますよ~。
ちなみに、彼の得意とするシャドーボックスのペンダント、ターコイズのネックレスと合わせていたお客様がいて、すごくかっこよかったです。
こんな感じ。

シャドーボックスは、すごく薄いシルバーを使う人が多いんですが、
サンシャインのものは重量感があっていいです。

Happy New Year★2010

遅くなりましたが、新年の御挨拶、明けましておめでとうございます。
アメリカらしい新年を迎えたく、近くの街に出てカウントダウンに参加してきました。
お祭り気分の中、インディアンの食事にはめったに出される事のないお酒を飲んでいい気分でした。
アルコール中毒の多いインディアンの間では、飲酒はあまりいいものとされておらず、断酒をするインディアンが大変多いです。ギャラップでは日曜日になると、どこもかしこもお酒売り場のシャッターが閉まり、お酒が買えないというルールまで存在します。
さて、インディアン達の新年はというと…
ナバホズ二は特に儀式もなく家族でゆっくり過ごすようで、
サントドミンゴホピでは新年のセレモニーが連日あったようです。
クライアントの一人でもあるホピのチャールストン・ルイスに誘われてはいたのですが、雪の残る中ホピへの急こう配な坂道運転は怖い!と思い丁重にお断りしました。
私達と彼との出会いは偶然でした。
道に迷って訪ねた家が偶然にもチャールストンのお母さんの家だったのです。
『息子もシルバースミスなのよ。』と紹介され、現れたのが彼だったのです。
よくよく見ると家の中に彼の写真が飾ってあり、若かりし頃のハンサムなチャールストンの写真が見れました。ここだけの話、チャールストンは高校のプロムキング(パーティーの中で一番かっこいい人に与えられるもの)だったようです。
昔やんちゃだったのでは?と思わせる彼の工房は、お父さんになった今もどことなく男くさく、バンド活動もしてる音楽の趣味が垣間見れたりしました。
ロックな音楽が彼の作品にも影響しているんだな、と実感したのを覚えています。
これが彼の作品です。


このサンフェイスとフェザーのコンビデザインが彼の代表的なモチーフです。
どことなくマジックでイラストをかいた様なタッチが私は好きです。
自身のデザインには自信を持っているようで、今後ジュエリー以外の展開も考えているようです。音楽にしろ、アーティスト気質なんですね。
今後はというと、彼らしいちょっとワルいロックなアイテムを頼んでいます。
他のホピのアーティストとは違ったテイストは彼の持ち味です。
かっこいいホピのアイテムをお探しでしたら、チャールストン・ルイスが是非おススメです!!

人を幸せにするジュエリー

お金は重要ではない。お金は使えばそれで終わりだ、だが美しいものは必ず残る。
これはサントドミンゴ族カルヴィン・ロヴァトの言葉です。
今回は彼の作品についてのお話です。サントドミンゴ族は、ヒシネックレスで有名な部族です。石や貝などの素材をカットし、ビーズにしたものを繋げて作ったネックレスをヒシネックレスと言います。私は写真の様にペンダントを通して使う事もありますし、シンプルにチョーカーとして身につけたりもします。

こちらはメロンシェル。彼の作品でよく使われる素材の一つです。
カルヴィンは全てのビーズを一から自分で制作するところから始めます。素材も多種多様、ターコイスはもちろんのこと、ジェットやサンゴ、サーペンタインなどの天然石や様々な種類の貝を使用します。

これら全ての素材を薄い四角形に、慎重にカットします。まずここで驚くべきことは、彼の作品に使われるビーズは、全て平行にカットされているという事です。平行にカットされたビーズは、実際ネックレスにして身に付けた時、非常に滑らかなカーブを描きます。これはとても重要なことであり、同時に他の作家との大きな違いです。並行でないビーズを、カルヴィンがジュエリーに使うことは決してありません。

その後四角い状態のビーズに穴をあけ、ワイヤーに通します。丸く滑らかなビーズになるまで、カルヴィンが納得いく最高の状態になるまで、何度も何度もグラインドをします。天然の素材を使用するカルヴィン、作業の途中でビーズに亀裂が入ったり、掛けてしまう事も良くあるそうです。
サントドミンゴのヒシネックレスをみると、そんな作業途中のハプニングの軌跡が見てとれます。注意深く観察すると、ネックレスのなかに、少し欠けているビーズをちらほらと見つけることがあります。
ですが、ここでもカルヴィンは絶対に妥協しません。少しでもビーズに傷がつくと、手前までのビーズを全てワイヤーから外し、傷ついたものだけをを取り除きます。ビーズに傷がつくたびに、これを何度でも繰り返し、完璧な状態のものだけが彼のネックレスに使われるのです。この徹底した制作へのこだわりは、尊敬に値します。

使われる天然石や貝の色の選択も抜きん出ています。兎に角実物をご覧ください。
彼が自然の中で発見した配色、サントドミンゴの四季のなかで感じてきた色の移り変わり。目に映る全てのものから色彩のヒントを得ている、というカルヴィン。今年のインディアンマーケットではなんと琥珀を使い、他の誰も真似する事の出来ない素晴らしい作品を出展しました。琥珀が光に当たるたび現れては消える色彩。琥珀の、動きのあるその色の美しさは圧巻です。マライカのオンラインショップでも、彼の琥珀を使ったヒシネックレスをご用意させて頂いております。

カルヴィンは決して急ぎません。これが特別なものなのだということは見てもらえば必ず理解してもらえる、そう信じているからです。決して焦らず、贅沢過ぎるほどの手間と時間をかけて作品を作り上げます。
日本であなたの作品を身につけることになる人たちにメッセージを届けたい、とリクエストしたら、こんな宝物の様な言葉を貰うことが出来ました。
『こういう人間がいたという事を覚えておいて欲しい。
たとえ悲しいときでも、あなたの心が軽くなりますように。身につけるたびに嬉しさや喜びを思い出せますように。
その為に美しいものを生み出そうと努力した人間がいた事を。あなたの幸せを願った人間がいたという事を。』

カルヴィン・ロヴァト 彼の工房にて

女性に大人気、Zuniのインレイジュエリーたち

インディアンジュエリーに興味を持ったきっかけが、ズニ族の可愛いインレイだった、という女性は多いのではないでしょうか。インレイとは、石をカットしてはつなげ、カットしてはつなげ、を繰り返しながらモザイク画の様に表現する技法です。日本でも樹の皮を切り絵の様にカットして張り付ける寄木細工という伝統工芸がありますが、それの石ヴァージョン、といったところでしょうか。
早くから彫金技術を手に入れたのはナヴァホだ、と言われています。ですがこのインレイの文化自体は紀元前からズニ族が用いていた技法で、彫金を学んだズニ族が、シルバージュエリーに活用したまでの事、ズニ族のインレイ文化はこの数百年で起こったものではありません。陶器などの表面に、ターコイスでまさにモザイク画されたイヤリングなどが発見されており、太古の昔から装飾技術として用いられていたのです。
現在ではジュエリーに見られるインレイの種類も多種多様です。彫刻の様に立体的なスカルプチュアルインレイ、シルバーの中に埋め込んだフラットインレイ(エッチングインレイとも呼ばれます)、石と石の狭間にシルバーがあるチャンネルインレイ、シンプルに石どうしを繋げたソリッドインレイ。どれも大変な手間と経験なくしては出来ない、素晴らしい芸術品です。この細やかな作業と正確さは、日本人には堪らないものがあります。
こちらはS&E Guardianのフラットインレイバングルです。鳥は天からのメッセージを運んでくると信じられています。

モチーフも様々です。幾何学的な模様、動物、植物、カチナ。あらゆる世代の方がご自身に合ったデザインを見つけて頂けるバリエーションの豊富さ、これも人気の一つです。
マライカでは時計やペンダントヘッドを贈り物としてお求めになるお客様が大変多く、私も自分へのご褒美に、と理由をつけては購入していました。
ジュエリーの表面に様々なモチーフがまるで絵の様に表現されているアクセサリー。インディアンジュエリーの好き、嫌いを超えて女性には大変人気のあるジュエリーです。

上の写真の様に黒、白、黄、赤、青の色遣いで表現されたインレイのジュエリーもよく見られます。これは6つの方向を表しています。北→黄、南→赤、西→青、東→白、黒→下、以上全ての色を持ったマルチカラー→上となり、またこれらの色はズニ族のキヴァ(宗教的なグループ)にも深く関係しています。ズニの全ての人々がそれぞれのキヴァを持ち、キヴァはそれぞれ上記6パターンの色で分かれています。
一見可愛らしいジュエリーにも、様々な思いやメッセージが詰め込まれていると思うと、身につけるだけで心が強くなったような気がします。

シンプルなコーディネイトにさり気無く身につける方、スーツの袖からちらっと見える程度に時計をされる方、身につけ方は自由です。また、写真の様なフォークロアがお好きな方にはさらにおススメです。
マライカ各店では一点物の可愛らしいインレイアイテムを沢山ご用意しております。
複雑なルーツや知識はさておき、まずは綺麗だな、可愛いなと感じたものを手にとってみて下さい。ほんの小さなジュエリーにも、それを作った作家の歴史や思いが込められています。本格的なジュエリーは、普段のお洒落をもっと楽しむための大切なスパイスです。

これはココペリ?それとも…

先日ホピ族ケビン・タカラが彼女と事務所に来てくれました。
小さい事は気にしないケビンに対し、しっかりものの彼女がいつも細かい所をケアしてくれます。いつも笑いの絶えない幸せそうな二人です。
ジェーソン・タカラを兄に持つケビンはファミリーの中で末っ子になります。シルバーメイキングは兄からではなく(職人気質のジェーソンは簡単には教えないそうです!)、ジェラルド・ロマベンテマらと一緒に学校で習ったそうです。なのでジェラルドとも仲がよく、またチャールストン・ルイスとも彼を“チャーリーブラウン”という愛称で呼ぶほど仲良しです。
いつもは控えめなケビンですが、スイッチが入ると手振り身振りで話しだすのが面白いです。飾らない性格がとても魅力的な人です。
この日はホピのパン“ピキ”を持ってきてくれました。
彼自身もピキが焼けるんです!(熱した鉄板に手で生地を伸ばすため、最近では作り手が減っています。)

本日は“ココペリ”について興味深い話を聞いたのでご紹介します。
さて、こちらのモチーフなんでしょう??

ココペリ?!日本ではこのラッパを吹く精霊は一般的に豊作を願う“ココペリ”として浸透していますよね。こちらのお土産さんでもこのモチーフのグッズはココペリとして売られています。
ですが、ケビンが言うに“フルートプレイヤー”なんだそうです!!!
ホピにはたくさんのフルートプレイヤーがおり、ケビンもその一人です。
バンブーのような素材からできたフルートをセレモニーの際に吹くそうです。
ケビンの作品で比べてみましょう。
右がココペリで、左がフルートプレイヤーです。

さて、では“ココペリ”と“フルートプレイヤー”はなにが違うのしょうか?
●ココペリとは
子供の成長や植物の成長を祈る、スピリットである。
首には黒と白の首飾りをしており、これは雲を象徴している。
ココペリの季節は冬である。
手には種の入った袋と植物の茎を持っている。
●フルートプレイヤーとは
収穫と雨を祈るヒューマンである。
フルートプレイヤーの季節は秋である。
手にはフルートを持っている。
目からウロコの事実ですね!
個人的には以前何かで知った“ココペリは笛を吹きながら豊作を祈る”っていう話の方が好きなんですが…。
部族によって、また村によってストーリーは違ったりするので、『笛を持ってるのはココペリではない!』とは一概にはいえませんがおもしろい一説だったのでご紹介しました。
ココペリの存在を思わず信じてしまいたくなる、インディアンの聖地グランドキャニオンからの眺めです↓

和に通じる繊細な美!

先日、ズニ族レイラン&パティー・エダーキー夫妻の家に遊びにいってきました。
レイラン&パティーは、貝や石を小さく削りそれを組み合わせて模様を作り出すインレイという手法でジュエリーを作っています。この手法は古くからズニ族が得意とする手法です。
この夫妻のジュエリーはその淡い色使いと、細かい仕上がりが美しく、他のアーティストとは一線を引く仕上がりです。
こちらが彼らのジュエリーです↓
中央にはわずか5mmほどのデワ(サンフェイス)があしらってあります。
細いライン一つ一つが薄い石をはめ込んで作ってあります。

本日は彼らのメーキングを取材させてもらいました。
インレイがいかに手間のかかる作業なのか、職人技にため息の連続でした。
石を組み合わせ削る際には、なんらかの印しをつける訳でもなく長年の感でその1mm以下の細かさに迫る技術はまさに職人技でした。

ジョークが飛び交う仲のよい夫妻ですが、仕事はそれぞれが各パートを分業しています。レイランの作った型に、奥さんが石や貝から作ったモザイクをはめ込み、最後にもう一度レイランが命ともいえる“デワ”をはめ込み磨きあげます。
歯医者さんのようにきれいの整頓された仕事場は彼らの几帳面な性格がよくでています。
この小さなキャンバスともいえるインレイの原材料ですが、現在はサプライと呼ばれる材料屋さんで世界中からのシェルや石が揃います。インレイに使われる伝統的なターコイズといえば、綺麗な空色のスリーピングビューティや緑のフォックスです。今はこうしたサプライのおかげでいろいろなターコイズが手に入るようになり、その表現の幅も広がりました。
時代と共にジュエリーの手法も変化しています。
今は『スーパーグルー』という瞬間接着剤があり、それを間に挟み接着する事によっていろんな貝や石の組み合わせが可能になりました。大昔のインレイはベゼルと呼ばれるシルバーの型を石の曲面にはわせ、一個ずつ固定したそうです。
↓このようなシルバー枠です。

アンティークには素朴な温かみの良さがあり、今の進化したジュエリーには昔は表現できなかった美しさがあります。
帰りにスペシャルなお土産をもらいました。
ズニの特別な湖で採れる塩です。彼らは“ズニソルト”と呼び、この塩に特別なパワーがあると信じています。日本にいる私たちの家族にまで気遣って、この幸運の塩をくれました。
市販の塩よりも大きく結晶化されていて、光を当てるとクリスタルのような輝きがあります。

ズニにはこの塩にまつわる不思議なストーリーがあります。
この塩の湖にはソルトウーマンが住んでおり、彼女を怒らせると塩が採れなくなるんだそうです。なので彼女が嫉妬しないように、この湖に近づいていいのは男性のみというルールがあります。女性は覗く事すら許されません。
長年の間、ズニの人々はその掟を守りその恵みの塩のパワーにあやかってきました。
細かく砕いて料理に使うだけでなく、お祈りの際に大地にまいたり、また旅人に持たせたりするそうです。
ありがたい塩をもらったのもそうですが、二人のその温かい心遣いも嬉しかったです。

石なしアイテムのススメ

豊富なバリエーションとグレードの高いターコイスを使用したアイテムが自慢のマライカですが、今回はそのターコイスを支えるファンデーション、シルバーの土台についてその魅力をご紹介いたします。
インディアンジュエリーに使われている彫金の技法は様々。今回触れるのはスタンプワークについてです。
オールドスタイルのジュエリーに、避けて通れないテクニックの一つにスタンプワークという技法があります。
銀板にシルバーよりも硬い金属で模様を打ち付け、連続したその作業から様々なデザインが生み出されます。
作家によってはスクリューの棒やねじなど、身の回りにある利用できそうな素材全てをスタンプに変えてしてしまいます。
もちろんシルバーサプライにも様々なパターンのスタンプが売っていますが、多くのシルバースミスがオリジナルのスタンプを持っています。こちらはゲイリーリーブスの使っているスタンプ。

石の存在感とはすごいもので、何の変哲もないシルバーの土台に、一つターコイスが乗るだけでまったく違う作品へと変えてしまう威力があります。
だからこそ、あえて石を使わず、シンプルなスタンプワークだけで勝負しているオールドスタイルの作品からは、玄人にしか出来ないバランス感覚や感性、経験値といったものを直に見て取る事が出来ます。
写真はサンシャインリーブスの作品。
彼はジュエリーだけでなく、こういった服飾のアイテムから雑貨まで手掛け、見事な職人技と感性で作品を作り上げます。

スタンプワークの様なさり気無いシンプルなアイテムを、バックルやピアス、コンチョなどで分散させて身に付けるのも面白いです。
ジュエリーを複数組み合わせたコーディネイトがどうも難しい。。。ごてごてになってしまう、バランスが悪い、とお思いの方にもお勧めです。ターコイスやインレイなど、石を使用したアイテムをバランスよくまとめてくれるからです。

インディアンジュエリーというマニアックなジャンル。このターコイスはどの鉱山のものなのか、ナチュラルなのか、ウェブは綺麗か、色はどうなのか、、、こだわっていけば気になるのは当然です。しかしその石を支える素材について、丁寧に観察し、実際に身につけ、理解を深めながら目を肥やす事も、忘れて欲しくない大きな醍醐味です。
着まわしが出来る洋服の様に、気がつくといつも身につけている、そんなアイテムとして重宝していただけるはずです。
ターコイスが付いていないインディアンジュエリーにはあまり興味が持てない、と思われる方は多いと思います。
私個人の捉え方かも知れませんが、シンプルな、たった一つの素材や方法でどこまで表現を広げられるか、もの造りをする時、これが最も難しく重要な事なのだと思います。ゴージャスにデコレーションする事よりも時に何倍もの工夫が必要とされ、作家の素の実力が全面に出てしまうからです。

石の魅力に囚われることなく、銀という素材にひたすら正面から向き合う作家の心意気には『シビレル!』の一言です。

ロックンロール・ナバホ♪

大音量のハードロックの中、製作をするのはこちら

キャストのジュエリーと言えばこの人!のアーロン・アンダーソンです。
たまたまシルバーサプライ(材料屋)で出会った彼ですが、腕にしている彼の作品を見て快く自分のワークショップに招待してくれました。ほんと、インディアンは気さくな方が多いです!
自分の事を“クレイジーなロックンロール・ナバホ”と言う彼ですが、豪快な笑い方と愛嬌のあるワルい冗談がなんとも憎めないキャラクターです。
一見、大柄で豪快なバッドボーイといった雰囲気ですが、その仕事場は建築の図面を引いてるかの様なスッキリとした空間で、作り出すジュエリーはとても繊細です。
こちらが彼の作品↓

老舗のトレーディングポストでも特集を組まれる程、現地での彼の認知度は高く、作りだされるジュエリーはコンテンポラリーからオールドスタイルまで幅広いです。
彼はキャストの中でもトゥーファキャストと言って柔らかい石に模様を彫って、そこに高温の溶かしたシルバーを流しいれる手法を行っています。
このトゥーファキャストは石が柔らかい為、その型からジュエリーをおこせるのはわずか3~4回といわれています。
そしてアーロンは1個のジュエリーに対してその型も一緒につけてくれるので、実質一回きりの製作なんだそうです!!
日本にいた頃はトゥーファキャストのその値段の高さに少し敬遠していましたが、実際のその過程を見ると納得してしまいました。1個のブレスレットにおよそ2時間もの製作時間がかかります。
また、彼の場合はパターンがなく頭に思い描いたイメージをそのまま石に掘り出していきます。
今回、彼の五官を刺激したのがジーパンのラインです。
このラインから、こんなジュエリーができあがりました。

一期一会ともいえるアーロン・アンダーソンのトゥーファキャストの魅力、是非!直接味わってみてください。

雪*。・

早々、今週はこの冬初の雪が降りました!!
例年でいうと11月頃が初雪の頃なんだそうですが、今年はいつもよりちょっと早めです。
夜中から降り始めた雪は朝には15センチ程に積もっていました。
日本でも関東に住んでいた私にはあまり雪に馴染みがなく、一面の銀世界に大はしゃぎですが、こちらの人々は雪には慣れっこです。あまり動じず、車もチェーンなしの4輪駆動でなんなくやり過ごします。
さて、本日は雪とは深い繋がりのあるホピ族のシルバースミス、ジェーソン・タカラ氏の訪問がありました。
彼のクラン(氏族)はスノー、雪氏族です。なのでホールマークもご覧の通り、雪ぐもを象ったものになっています。

クランが雪氏族なだけあって、ジュエリーでも雪ぐものモチーフを好んで使っています。
ここで”クラン”って何?という方に簡単にご説明します。
ズニ族ホピ族は自分達のルーツのストーリーをもっており、それぞれクラン(氏族)を持っています。
そのストーリーの中では、ある時クランはリーダーによってそれぞれにつけられたものとされています。いわばファミリー的な分類でした。なので今現在は他人として暮らしていても、同じクランであるならば、さかのぼるとファミリーを意味し繋がりがあるという事になります。
インディアンは氏族社会になっていて、一般的に子供達は母方のクランを受け継いでいくそうです。
ホピの人は特に自分のクランをホールマークにしたり、家の外観にそのモチーフを飾っていたりしています。雪以外に、コーンやベア、カエル、太陽など様々なクランあります。
日本で言うところの家紋といったところでしょうか。
それぞれのクランはクランごとに役割を担っており、いずれも精霊を信じ祈ります。
ちなみにジェーソンの雪氏族は秋の収穫を祈ってダンスするそうです。
私がここニューメキシコにきて早一年になろうとしています。そしてその間にいくつもの祈りの儀式がありました。
ファミリーの結婚や出産、成人などの特別な日の儀式以外に、年間を通し多くの祈りがインディアン達にはあるのです。
自然を敬い、すべてのものに感謝する姿勢には、思わず忘れていた大切な事に気づかされます。贅沢になれるとこうした基本的な事をついつい忘れがちになり、あるものではなくないものばかりに気をとられてしまっていたな、と。
さて、話を戻しますが、ジェイソンの今回受け取った作品はやはり匠らしい仕上がりでした。
定番のメイズをあしらった作品は近々アップしますのでお楽しみに☆
そしてすかさず、次回作の話し合いもしました。
次回はあえて、こちらで指定をせず、選んでもらったハイグレードの石を使って匠にすべてたくそうと思います。
商談中は笑顔のジェーソンも真剣な顔で石を選んでくれています↓

メイズモチーフが代表作ではありますが、メイズなしのカチナも繊細な作りと随所に散りばめられたモチーフにストーリーが込められていて面白いです。
同じカチナ、同じメイズのモチーフを使っていても他と何か違う!
パターンを持たないジェーソンのアーティスト魂が一点一点に込められているからなのでしょう。有名になっても、今でも作品に対し向かい合ってる姿には感服します。
兄弟であっても簡単にはその技術は教えない、どこまでもアーティスト気質のジェーソンだからこそ、類を見ない作品を作りだせるのでしょう。

次回作、是非ご期待ください。
石のイメージで作り出されたジュエリーがどんなものなのか、私達もすごく楽しみです!!
ジェーソン・タカラの商品をご覧になりたい方はこちらから→クリック