ネイティブアメリカンの儀式の話

お久しぶりです。

ニューメキシコ州はまだ寒く、三月という感じがせず今日も雪予報が出ています。

アメリカは全州でマスクの義務化がなくなり、ニューメキシコ州もマスクをしない人が増えてきていますが、ネイティブアメリカンのマスク着用率はまだ高いです。

今日はホピのジュエリーを値つけしていました。銀板と糸鋸のみで描き出されるその世界には、たくさんの祈りが込められています。

アーティストの中には部族の中で重要な役割をになっている人もいて、ホピ族、ズニ族、サントドミンゴ族など儀式に呼ばれて参加させていただくこともたくさんありました。(コロナ禍で今はほとんどの儀式が部族の中心の人たちのみで行われています)

ちなみにナバホ族は人口も多いし土地も広いので、家族単位でやることが多く部族全体でやる儀式というのはお祭りみたいなフェアーと呼ばれる場所で開催されます。

儀式そのものは写真を撮ることはできないので毎回心に焼き付けるのみなのですが、バッファローダンス、レインダンス、バタフライダンス、スネークダンス、などなど英語の名前がついていない儀式にもたくさん参加させていただいていますが、全てその儀式の中で共通していることは「祈ること」です。

その祈りをクリエイター(世界を創った神)に届けるための儀式。

その中心にあるものが平和です。白人やスペイン人からの迫害を受けながらも、隠れて自分たちの儀式や祈りをやめなかったのは、平和を祈ってきたからだとサントドミンゴ族のカルビンロバトが昨日話してくれました。

コロナが始まった時も、みんなで集まって儀式をすることはできないけど、平和を祈るための儀式はどの部族でも止まることはありませんでした。

どれが売れるか、着けたらどれがオシャレかということに囚われがちな現代のジュエリー論で頭がいっぱいになりがちですが、ジュエリーに祈りを込めるというネイティブアメリカンジュエリーの始まりを思い出させてくれます。

Zuni族のエイミーウェスリーの作品。よく見るモチーフでハミングバードとも呼ばれますが、ズニやホピの人たちは手と手を繋ぐフレンドシップのデザインといいます。

こんなご時世だからこそネイティブアメリカンの儀式についての話をシェアしてみました。

クモの意味

本格的な冬がやってきそうなニューメキシコ州。週明けにはどうやら雪が降る様子です。

さて、来週はハロウィン。日本でも盛り上がっていますでしょうか。

ハロウィンにちなみ、今日はインディアンジュエリーにもよく出てくる「クモ」について紹介します。

「スパイダーウェブ」はターコイズのマトリックスの名前としても使われ、クモというモチーフそのものがネイティブアメリカンにとって少し特別なものなのかなという想像はあるかと思います。

スパイダーウーマンとして神話に出てくるナバホ族のクモは、人々に織物と農業の技術を教え、多くの伝説や民話に登場して「一日を救い」、無実を守り、世界の調和を取り戻します。

この伝説上のスパイダーウーマンがナバホ族の女性に織物を教え、だからナバホ族の人々は織物で生計を立てることができるようになったと言われています。

一方でホピ族の神話に出てくるクモは、スパイダーグランドマザー(祖母)として登場して、「良きものの象徴」とされています。

クモの形をしているときはホピ族のキヴァの地下に住み、 彼女が必要とされるときはアドバイスをしたり、薬の治療法を提供するなど、多くの方法で人々を助けました。

クモはナバホ族、ホピ族ともに女性に結び付いています。

ジュエリーは文字がなかった時代にストーリーを刻む方法でもあったという伝統をモチーフから考えさせられますね。

Gary & Elsie Yoyokie

マライカでも人気のホピ族の作家、ゲーリー&エルシーヨヨキ。

極細の糸ノコを用いて繊細にカットされるデザインは、まさに芸術品です。
サンフェイスをはじめ、鳥や蝶などの動植物が描かれる多彩な作風は多くの方に愛されています。
また、ポップで可愛らしいモチーフも人気の秘訣です。

そんな多彩なヨヨキ夫妻が好んで描くモチーフは、いったいなんだと思いますか?
それは…

「水」 のモチーフです。

花と水のデザインのオーバーレイバングル

その理由は、「Yoyokie(ヨヨキ)には、ホピの言葉で「雨」という意味があるんだよ」と、エルシーヨヨキさんにお伺いしました。

そのため、水をはじめとする雨や雲、嵐のモチーフも多く描かれています。

ホピ族のジュエリーでも「水」をイメージしたデザインをよく見かけます。
自分の名前に誇りを持ち文化をジュエリーに落とし込んでいく。
そんな姿勢がジュエリーを通して伝わり、その魅力に心奪われてホピ族のジュエリーの中でも人気が高いのではないかと思います。

ペトログリフモチーフ!

先週末はZUNIの村の近くにある
ElMorro国立公園へ行ってきました!

この岩を登っていくと
1200年代~1300年代の先住民の住居跡があるそうで・・・

こんな感じで古代プエブロ人によって描かれた
ペトログリフ(岩絵)が見れるのも魅力の一つ★
そして、このペトログリフをモチーフに使ったジュエリーがこちら!!

Philander Begay

トゥファキャストを用いたフィランダーの作品はどれも表情豊かですね

Alex Sanchez

大きめのモチーフがカジュアルな雰囲気に

Myron Panteah

糸鋸でモチーフを切り出した神秘的なデザインです!
“ペトログリフ”と一言で言っても、ジュエリーへの表現の仕方は様々ですね
また、岩絵にはすべて意味もあります。
そんなスピリチュアルな思いのつまったジュエリー
魅力を感じずにはいられません!!

ナバホラグ

相変わらず寒いですが、それでもだんだん暖かくなってきたニューメキシコ。
昼夜の寒暖の差はそれはすごいですよ。
さて、今日は新入荷、ラグデザインのこちらをご紹介。


ヒシとラグデザインのリングとペンダントです。

ヒシを使ったバングルは以前から作っていたようですが、ぜひぜひペンダントとリングを!という私たちの無理な要望で作品化しました。
厚みのあるダンジャクソンの作品は、非常に曲げるのが難しいのとヒシの配置がまっすぐである程度の面積がないとうまくできないのとで、とても試行錯誤して作ってもらいました。
しかも、リングはリバーシブル(裏面もラグデザイン入り!)という要望も実現して、とても素敵な作品が出来上がりました。
残念ながらサイズ直しができないのですが、ピッタリ合ったら絶対に!買いですよ。
あまりに大変過ぎて、もう作りたくない・・・とつぶやいていましたので。
さてよく、「ナバホラグ」デザイン!と謳っていますが、根本的なナバホラグについて説明したことがあるかどうか・・・と思ったので少し写真を撮ってみました。



ナバホ族のおる織物、こちらもジュエリーと同じくかなり古い歴史がありまして、
昔の物が押入れから出てきて1億円が付いた!などとニュースでやっていたりします。
ナバホ族と言えば、遊牧民。遊牧民と言えば、羊。
羊毛を手つむぎし、サボテンや玉ねぎの皮などの原料で草木染めをして色をだしていました。
これがラグの作成風景のミニチュアバージョン。

そう、すべて手作り。
機械織りではないんです。
ナバホ居住区の中でもいろいろな地域によって柄が違い、地区によっての特徴も出ます。
日本の織物と同じですね。
現在は化学染料を使っているものが多いですが、それでもこの手間と歴史、現在は作り手が減っていることもあり、玄関マットサイズでも2万円から5万円ぐらいといった値段で取引されています。
ジュエリーと同じで細かさや、素材、作家によってコレクターもいたりして、とても奥深い世界です。

スワスティカ。


このマーク、マライカでは幸運のモチーフ「スワスティカ」としておなじみです。
今日Gary Reevesが、卍は「スワスティカ」というけど、反対の卍は「ローリングログ」と言うんだと衝撃の事実を教えてくれました。
ローリングログ:転がる丸太。
反対の卍は、幸運の4つのL(Love,Luck,Life,Live)が交わったマークとも言われています。
そんな「ローリングログ」、ナバホ族だけでなく様々なインディアンが昔からモチーフに使っていたことが分かっています。
右向きか、左向きかを気にして作っていたかは謎ですが、1900年代とかの非常に古いバスケットやラグにもこのモチーフが使われています。


スワスティカが第二次世界大戦でナチスのシンボルとして使われる以前は、ジュエリーにもたくさん使われていました。
マニアの方は、Fred Harveyスタイルの逆卍をコレクションしている方もいます。

さてよくよく調べてみると、右向きでも左向きでも、「スワスティカ」と呼ぶ人もいるそうな。
スワスティカの別名「ローリングロック」「ホィーリングロック」などと書かれているところもあったりして、詳細はよくわかりません。
ナバホ族の人たちが「ローリングロック」と呼んだという記事も。
そんなスワスティカ、ギリシャ・ローマ時代やインドのインダス文明など世界中様々な古代文明の中で使用されているモチーフだそうです。
特にヒンズー教、仏教などインドの宗教の中で好運の神聖なシンボルとして、使われてきたそうです。
サンスクリットでは、「swastik」は「健康」を意味し、チベット仏教では「幸運」と関係があるモチーフだとか。安定と安泰のモチーフだとか、東アジアの中では永遠を表すとか。
日本でも「まんじ」として知られているし、本当にワールドワイドなモチーフです。

奥深いホピジュエリーのモチーフ


『…毛?!』
こちら遊びにいったホピの家でみつけたもの。
ちょっとホラーですけど…
これ実は〝ロングヘアカチナ〟精霊の扮装をするのに
重要なカツラなんです。

これがロングヘアカチナ!
視界の開けたこちらでは遠くに雨雲が見えると、まるで黒いインクを空から垂れ流したようにみえるから不思議!
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ホピの人々は信仰が深く、一年を通して様々な祈り儀式が
あります。
その時にこうしたカチナの扮装をして歌い踊るんですね。
それぞれが必ずクラン(氏族)を持っているのですが、
そのクランによって役割が決まっていて、いつ、どんな祈りを
捧げるかが決まっています。
乾いた荒野に位置するホピ村なので、その祈りのキーワードはいずれも『水』『収穫』『雨』などになります。
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そしてそのスピリットはジュエリーにも織り込まれています。

Alvin Taylor作ブレスレットでご説明いたします★
(私物で失礼意!)

まずは左サイドからご説明!
イーグルの羽を使って水を祈ります。
そこへ水のある場所をさし示す亀が登場!
その亀の導く先には雨雲起こっており…
幸せの象徴と言われる蝶々が飛んでいます。

右サイドはというと…
フラッグスタッフ(地名)の山。ここからカチナは来たとされています。
この山の麓には〝キバ(集会場)〟があり、はしごが覗いています。そこから出てきたマッドヘッド(精霊)が祈りのダンスで盛り上げています。
そしてすべてが中央の太陽神に集まり祈りが届けられるという訳です。
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単純にモチーフの寄せ集めかと思いきや…
物語が詰まっているんですね~。
他にホピのモチーフにはこんな意味もあるんです…★★★

亀…忍耐
ウサギ…幸福
コヨーテ…
蜘蛛…才能
トカゲ…再生
イーグル…お告げ
ベア…強力なパワー
コーン…生命

意味を込めて、お守りとして持つのもいいですよね。
来年のお守りにいかがですか???